月は無慈悲な夜の女王
The Moon is a Harsh mistress
ロバート.A.ハインライン (著), 矢野 徹 (翻訳)
SFの中でも屈指の名作と言われるロバート・A・ハインラインの長編ですね。
物語は月に流刑された子孫たちが厳しい月世界環境で作られた穀物を地球側の人々にほとんど二束三文で延々送り続けていくのに地球からはほとんど見返りがなく月の穀物を作る為の資源が将来的に枯渇してしまって月世界が食料で暴動を起こすことを予測し、そのために地球の植民地、流刑地という場だった月を最終的に独立した国家として成立させる革命ものです。
それまでのハインラインの作品は右翼思想が強かったらしいけどこれは綺麗さっぱり覆す作品らしい…。
(私はまだ宇宙の戦士を読んでないのでなんとも言いがたいけど。)
この月は無慈悲な夜の女王の世界では食べ物、飲み物、空気すらも自力で生産・生成していかないと生きて行けない厳しい世界。
逆に何もしない、働かないとただ死ぬだけという世界で、文中に出てきた共通の合言葉
"There ain't no such thing as a free launch"
"タンスターフル・無料の昼食はどない"
のとおり、何かが欲しければ相当の報酬を支払わなければ手に入らないという…ごく単純だけど筋の通った資本主義が成立している世界なのです。
たとえ流刑にされてこの世界へ来た者でも厳しい月の世界が十二分にくだらない犯罪などを思い起こすことも出来ないくらいに生きる事を教え込まれるという世界です。こういう辺り、ハインラインの硬派な部分(この本の巻末の後書きの"克己主義"?)が垣間見えます。
経験がモノを言う、口だけじゃこの厳しい月世界は生きて行けない!!
の、ような。
そういうば(まだ斜め読み段階だけど)宇宙の戦士でもそんな感じの似た雰囲気がありましたね…。まぁ、主義主張がまったく違う世界ですが。
あと、人種やものの考え方なども注目すべき点ですね。
一妻多夫制の結婚制度、正確には"制度"というものがなく、自立した生活を送るのがこの月世界なのですけど圧倒的に女性の数が少ない故に一妻多夫制を取っていて、女性の権威が強めの世界です。それでも一人の女性を奪い合いということはなく女性の意思の方を優先で男性が結果的に折れてますね。まぁ奪い合いしても無駄な争いが起きるだけのようなので…とにかく何もかもに対して無駄なくしていかないとほんの少しの資源でももったいない世界ですから(笑)
それと月va地球(世界連邦)との戦いはなかなか面白いです。
まず革命を成立させるために首謀者が分かりにくい組織作り、あと欠かせないのが自立した意思を持ったコンピューター、"マイク"ですね。彼の名の由来はシャーロック・ホームズに出てきたシャーロックの兄の『マイクロフト・ホームズ』ですが彼は子供っぽいようで次から次へと作戦や革命で何をすべきか、下準備から情報統制まで色々と提案、勝率の計算、等々して四方八方手を尽くしていくのが面白いです。
ただ、ラストの…
おしゃべりだったマイクが壊れて何も離せなくなりただの計算機となったところに不思議な余韻を持ちました。
神よ、計算機もあなたの作られた生き物の一つなのですか?
主人公のこの問いは私自身も思いました。いつのまにかマイクを人として見ていたから…。
Author&WebMaster :
Azusa
| 2005年3月23日
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| ロバート.A.ハイライン


