The Room of Reverie
Book Report



象られた力 kaleidscap


象られた力 kaleidscape

出版社:早川書房
著者: 飛弘隆

飛弘隆 著

知人から薦められた本で、実質、初めて読む日本のSF作家の本。20年以上前からいる作家だけど、遅筆なのか、作家年数の割に本はあまり出していないようで、これと続き物(続刊未定)とで二冊しか出していない。
そしてこの本にはデビューの後、幾つかの短編が書かれた後に発表された中編・短編が4作ほど収録されている。(デビュー作は掲載されていない模様)
内容はちょっと黒くて意表を突く着想というか、さっくり読めて分かりやすいのに凝っていて、予測を裏切る内容という感じ。ただ単に奇を衒(てら)って嫌な裏切り方をしているわけじゃない所が好感を持てた。SFらしい小道具や仕掛けもかなりたくさん登場するけど、小道具を見せびらかすだけで終わるような事もなかった。物語そのものがしっかりしているのはやっぱりいい。ガジェットだけで楽しむのも良いけど、やっぱりお話そのものが面白い事にこした事はないし、両方があれば当然良いわけで、そういうあたりでこの本の話は両方が良いバランスにあった。

デュオ
一番最初の短編。結構黒い内容。
主人公による一人称だと思ったら(そうなのだけど)かなりのフェイントを食らわされた。
やっぱりこの話の一番の悪人は事の発端になったのにラストあたりでしっかり役得を掴んでいるジャクリーンだと思っている。お話は面白かったし好きだけど、ジャクリーンだけは嫌いだ(笑)

呪海のほとり
いかにも呪文やドラゴンみたいなのが登場したものだからファンタジーだと思ったらSFだったな話。
記憶が混乱した主人公と気難しい竜としたたかな老人と、キャラクターに個性と魅力を感じる。
続きを妄想したくなるような余韻が良かった。

夜と泥の
異星、宇宙船、奇怪な生態系、テラフォーミング(地球化)と、SFのスタンダートな背景と小道具が数多く登場するお話。上記のお話よりもSFらしい。
でも、内容は黒い(爆
まぁ、他のハヤカワSF(海外のだけど)に明るく朗らかな話の方がむしろ少ないので普通といえば普通だけど、何か黒さを感じる。多分、DNAを元に、地球人の少女が何度も再生→崩壊→異星人に改造されていくという流れに黒さを感じるのだろうけど。おまけにラストで何か良からぬ含みを持たせて終わったあたりにも黒さを感じたというか、とにかく全てが勝手に改造・汚染されるような話がジワジワと黒かった。いや、それでも良いのだけど、何か自分にも感染したような錯覚になったのがちょっと怖い。

象られた力
表題作。この本に収録されたお話の中で一番長い話。
まず最初に登場した人物たちが多すぎて誰が誰だか分かり辛かったけど、順を追ってどういう世界でどんな人物達が居るのか見えてきた。でも、その頃にはとってもまずい状況になっていて、次々に色々な人がヤバい事になっていって、結局かなり大変な事になってしまっていたりするけど、その過程が結構面白い。
あと、この話は"疫病"がもたらした災害という話らしいけど、何が疫病なのか後半までまったく分からず、その疫病が病原菌とかではなく、まるで、コンピューターウイルスのように振る舞うものが人間の精神に感染するようになったもの(だと思う。誤認してたらすいません)と種を明かされた時は、なんてアイデアだと素直に驚いた。この作品が表題になったのもよく分かりました。いやーこれが一番面白かったです。はい。

公式サイト
Laterna Magika SF作家 飛浩隆のweb録

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Author&WebMaster : Azusa | 2008年1月29日 | トラックバック(0) | コメント(0) | | 日本のSF作家


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