あなたがほしい
出版社:集英社
著者: 安達千夏
男を抱く事をできても、愛せない。女を愛していても、抱き合うことをおそれてしまう――
という背表紙のあらすじを読まずに「文学系の恋愛小説かな?」と思って購入したら、たしかに恋愛小説ではあるけどちょっと違うという、第22回すばる文学賞受賞作。すばると言えば、直木賞作家の熊谷先生がジャーナリストの書いた記事から表現を無断借用したと訴えられ、掲載中止になったことで話題になりましたね。
私がこの本を読んだのは「スプートニクの恋人」の読了直後で、これも女性が女性に恋するという内容で、若干食傷気味になっていたおかげで痛手だった。というより、その払拭のつもりで読んだのに見事にハズれたというか。そのあたりは私が内容を把握しないで読み始めたのが悪い。
さて、このお話、大手の建て売り住宅建築会社の営業職についている主人公「カナ」が、中年男性の建築家と肉体関係を持ちつつ、年下の女子大生に同性愛的性愛を感じているという困った筋書きで、さらに冒頭から男女の絡みのシーンがあり、それが割と具体的で、それを女性作家が書いているので困ったものです。困った困った言うと、さもこの作品が問題ありきな作品のようだけど、『私』が『普通の恋愛小説』を期待していて、『普通の恋愛小説』を読みたかったからであって、覚悟の上で読んでいれば困らなかったのでしょう。本当、困ったものだ。
その男女の絡みシーンだけど、描写はわりと内田春菊に通じるものがある。一人称だったからというのもあるけど、同じ女性作家だからというのも無きにしも有らず。グロくならない程度に具体的で赤裸裸、というあたりがそう。ただ、内田春菊の方は私小説家だからなのか、主人公とその男だけしかいないうよな世界観で、二人の(布団から)半径1メートル以内の空間で話が終わっているような印象がある。だけどこちらの方は男を下に敷き、冷めた目で男とその周りと世間を見下ろしているような印象がある。
でも、この話はそんな男女の絡みの部分だけでなくて、家族のあり方や愛情のあり方について描かれているのが
興味深かった。世間一般に言うところの「普通の家族」は結婚した夫婦が居て、子供が居て、安心して帰る家(場所)があって......だけど、このお話ではそういう世間一般で言われるようなものでない、女性同士、結婚してない男女同士であっても「家族」という安心して帰れる居場所を得たいと登場人物達は願っていた。そんな姿は、こういうのもあっていいかな?という気になった。このあたりで普通の恋愛小説が読みたかったはずなのに、ちょっと負けた気もした(笑
Author&WebMaster :
Azusa
| 2008年3月17日
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| 日本の作家
タグ : 安達千夏 すばる 文学賞 集英社
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