The Room of Reverie
Book Report



竜門の衛

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竜門の衛

出版社:徳間文庫
著者:上田秀人

徳川吉宗から長男・家重の時代への過渡期の頃を舞台に、将軍世継ぎに絡む、幕府はもとより、朝廷までも巻き込んだ権力争いの中で、一人の御家人(旗本・御目見以下の将軍のお目通りが出来ない直参の者)が活躍する、という内容。
ハヤカワSFやファンタジー小説、恋愛小説等々、まったく真逆のジャンルを好んで読んでいた私からすると、時代小説なんてまず読まない(手をつける予定も無かった)のだけど、父が時代小説好きで、特にこの作家のファンでしてね。熱心に話をする上に、かなーりしつこく勧めてきまして、読む事になりました。
一応、時代小説は手をつけた事が無いというわけでなく、2.3作ほど読んだ事はあるのですよ。ただ、キヨスクの文庫本の本棚に置いてあるようなもので、作家の名前も思い出せないのだけど、内容が、ことあるごとに刀を抜いては、殺陣と芸者と茶屋の娘と通りすがりの町娘となにやら......の、繰り返しで、物語がそれだけで出来ているとさすがにうんざりしてくるというか。今はそうでもないようですが、ちょっと前の大御所以外の時代小説の新作って、そういうのが結構多かったようで、そういう所で当たりどころが悪かったというか。
とはいえ、大御所の先生方だと、渋くてごつい剣客が真剣勝負!男の美学とロマンーーのような、汗臭そうな内容のような感じもしましたし、普段がハヤカワと恋愛小説ばかりの私が手を出す筈もない(笑)
(うちの旦那は「それがいいんだよっ!」と、力説しておりますが。)

閑話休題。
紆余曲折で読んだこの作品ですが、案外面白かった。
案外、という言い方も失礼ですが、少し前にあった安直な芸者や町娘を絡ませて殺陣を見せればいい、というような内容でなく、時代背景もよく分かりましたし、陰謀あり、様々な旗本や大名が暗躍し、刺客が、将軍が、世継ぎが、と、お膳立てあって、そこでようやく奇麗な芸者が耳打ちをし、殺陣があり......
実際は「奇麗な芸者が耳打ちをし、いきなり殺陣があり、その後にお膳立て」ですが(笑)
土産をもって能天気に実家帰りをしようとした主人公へ、唐突に芸者が耳打ち、実家に行けばいきなり曲者、というのも虚をつかれて良かったのですね。出だしというのは、あまり小難しくダラダラと書かれていると取っ付きが悪いし、読む勢いが萎えて辛くなりますから。
ちょっとだけ、昔の地名や役職名に混乱気味になりましたけど、あまり一般的に知られていない事には説明もありしたし、雰囲気だけで何をしに、何処へ以降としているのか分かるのでこのあたり流しながらでも十分読めますね。
ところで、昔の江戸のお風呂屋さんって、女風呂に刀掛けがあったんですねぇ。
御家人さんの役得って、いいですね(笑)

気になる点としては、とりあえず、甲賀組の方々を殺し過ぎです(笑
作中にも書かれていますが、忍者を一人前に育てるには適正もあり、血の滲む努力もあり、何より甲賀忍者はたしか、集団での活動が得意だったはず。あまり殺しすぎたら次の活動が出来なくなるんじゃ......? というより甲賀の皆様がたった一人相手にこんなにケチョンケチョンにされて哀れだなぁ、と。
実に大した事の無い、とても個人的な所感ではありますけど。

あと、宝蔵院ですか。
主人公の使う刀術は「宝蔵院一刀流」なのですが、この宝蔵院、作中でも書かれている通り、槍の流派で刀術は無く、この作品中での創作ですが、解説が非常に簡略され過ぎていたことかな? 
あまり簡単に説明されると、こう、凄い流派ではないような気がしまして。
そんなに簡単に解説しないで、この剣術の伝来にこんなこんなこんな込み入った事情があって、さらに主人公に伝わるまでの経緯が実はこんな風でこんな風で......というのがあると、刀を振るうシーンがもっと楽しめたのになぁ、とは思いました。

もっとも、全ては「そうあってくれたらいいなー」程度の願望です。
それと、前向きな事を言った後に文句が言いたくなるのは次に期待している、という意味です。
つまり、結局の所、「面白かった」のですね。

そんなわけで、父よ。結構面白かったよー(笑)
次に期待しますわ。

公式サイト
三文文士の部屋

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Author&WebMaster : Azusa | 2008年5月14日 | トラックバック(0) | コメント(0) | | 時代小説


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