The Room of Reverie
Book Report



ロバート.A.ハイラインで読んだ本

月は無慈悲な夜の女王

月は無慈悲な
夜の女王

出版社:早川書房
著者:
ロバート A.ハインライン
価格:¥ 966

The Moon Is a Harsh Mistress

出版社:
New English Library
著者:
Robert A. Heinlein


The Moon is a Harsh mistress

ロバート.A.ハインライン (著), 矢野 徹 (翻訳)

SFの中でも屈指の名作と言われるロバート・A・ハインラインの長編ですね。
物語は月に流刑された子孫たちが厳しい月世界環境で作られた穀物を地球側の人々にほとんど二束三文で延々送り続けていくのに地球からはほとんど見返りがなく月の穀物を作る為の資源が将来的に枯渇してしまって月世界が食料で暴動を起こすことを予測し、そのために地球の植民地、流刑地という場だった月を最終的に独立した国家として成立させる革命ものです。
それまでのハインラインの作品は右翼思想が強かったらしいけどこれは綺麗さっぱり覆す作品らしい…。
(私はまだ宇宙の戦士を読んでないのでなんとも言いがたいけど。)

この月は無慈悲な夜の女王の世界では食べ物、飲み物、空気すらも自力で生産・生成していかないと生きて行けない厳しい世界。
逆に何もしない、働かないとただ死ぬだけという世界で、文中に出てきた共通の合言葉
"There ain't no such thing as a free launch"
"タンスターフル・無料の昼食はどない"
のとおり、何かが欲しければ相当の報酬を支払わなければ手に入らないという…ごく単純だけど筋の通った資本主義が成立している世界なのです。
たとえ流刑にされてこの世界へ来た者でも厳しい月の世界が十二分にくだらない犯罪などを思い起こすことも出来ないくらいに生きる事を教え込まれるという世界です。こういう辺り、ハインラインの硬派な部分(この本の巻末の後書きの"克己主義"?)が垣間見えます。
経験がモノを言う、口だけじゃこの厳しい月世界は生きて行けない!!
の、ような。
そういうば(まだ斜め読み段階だけど)宇宙の戦士でもそんな感じの似た雰囲気がありましたね…。まぁ、主義主張がまったく違う世界ですが。

あと、人種やものの考え方なども注目すべき点ですね。
一妻多夫制の結婚制度、正確には"制度"というものがなく、自立した生活を送るのがこの月世界なのですけど圧倒的に女性の数が少ない故に一妻多夫制を取っていて、女性の権威が強めの世界です。それでも一人の女性を奪い合いということはなく女性の意思の方を優先で男性が結果的に折れてますね。まぁ奪い合いしても無駄な争いが起きるだけのようなので…とにかく何もかもに対して無駄なくしていかないとほんの少しの資源でももったいない世界ですから(笑)

それと月va地球(世界連邦)との戦いはなかなか面白いです。
まず革命を成立させるために首謀者が分かりにくい組織作り、あと欠かせないのが自立した意思を持ったコンピューター、"マイク"ですね。彼の名の由来はシャーロック・ホームズに出てきたシャーロックの兄の『マイクロフト・ホームズ』ですが彼は子供っぽいようで次から次へと作戦や革命で何をすべきか、下準備から情報統制まで色々と提案、勝率の計算、等々して四方八方手を尽くしていくのが面白いです。
ただ、ラストの…
おしゃべりだったマイクが壊れて何も離せなくなりただの計算機となったところに不思議な余韻を持ちました。
神よ、計算機もあなたの作られた生き物の一つなのですか?
主人公のこの問いは私自身も思いました。いつのまにかマイクを人として見ていたから…。

Author&WebMaster : Azusa | 2005年3月23日 | ロバート.A.ハイライン


失われた遺産 《ハイライン傑作集 1》

失われた遺産

出版社:早川書房
著者:ロバート A.ハインライン

Assignment in Eternity
ロバート.A.ハイライン 著 矢野 徹/田中 融ニ 訳

SFの大御所、ロバート.A.ハインラインの傑作集です。私としては初めて読むハインラインの作品なのですけど。内容は…そんなに古さを感じないのに戦前に書かれたっていうのがあるのが凄い!!
まぁ人によってはノスタルジックで古典的と言う人もいるでしょうが私は今のところそれほどSF自体を読んでないので新鮮そのものなのですけど。あと、SF読んだことがない人には読みやすいかもしれない。

深淵Gulf
秘密裏の運び屋が謎の資料を運ぶ為に月から帰還した話。まるでジェームス・ボンドの如くな行動を繰り広げているのだが実はその資料というのが地球そのものの運命を決める資料。それを手に入れた物は地球そのものを滅ぼすということすら出来るという恐ろしいもの。
主人公が運び屋から一転して地球を救う使命を帯びたものになる過程がなかなか。昔見た、海底二万マイルで最新鋭の潜水艦に招かれてありとあらゆる神秘に驚く人を思い起こさせます。
ラストがちょっと悲しいところがあるけど中篇ながら傑作。

時を越えてElsewhen
ある大学教授が違う次元に行く方法を編み出して生徒達と共にそれを試す実験をするもの。
なかなかユーモラスな内容。読んでいるとSFなのだけどファンタジーにもなりえるかな?とか思ったり。
もちろん違う次元に行ってしまった生徒のために大学教授はあらぬ疑いをかけられて警察に追われるけどまぁラストは見てのお楽しみ。

失われた遺産Lost Legacy
この本の邦訳のタイトルにもなっている作品。
人間の失われた能力をある大学の博士が生徒と親友と共に発見する話。そしてその失われた能力はある一部の人々によって守られ、そして伝えられ、そして教えられる。
人間は昔は偉大な力を持っていた…というある意味、夢のある話であり、可能性の話であり、退化の話であり、そして進化の話でもある気がする。
この話を見ていると自分にも失われた力…超能力があるんではないかと錯覚してしまうが…まぁ本だし…と思っておこう。
(…というほどの内容)

猿は歌わないJerry Was A Man
知能を高められた使役用で処分を待っている猿がある金持ちの夫人の目に留まった。
婦人は彼を人間ではないかと思い、そして人間であると裁判を始める。
人間…と他の知的生物との差というのもを考えさせられる。
人間は地球上でもっとも尊ばれる存在と思われているが本当にそうなのだろうか?
この話に出てきた猿は歌った。自分達より下等と見なし、安易に色々な生物を殺す人間のエゴイズムと…そして猿を助けた婦人のエゴイズム(これもエゴイズムとも言える…話を見る限り)結局、何が優れているなんてわからない。

Author&WebMaster : Azusa | 2004年3月18日 | ロバート.A.ハイライン


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