ネシャン・サーガで読んだ本
ネシャン・サーガ 3 裁き司 最後の戦い
Ein phantastischer RomanDas Lied der Befreiung Neschans
ラルフ・イーザウ 著 酒寄 進一 訳ネシャン・サーガシリーズ三巻。完結です。巻末の訳者のあとがきに書かれている通り、聖書的な話なのは聖書の士師記が話のベースだから。でも多分、士師記だけじゃなくて、最後の士師の話のサムエル記も少し絡んでいる気がしてならないけれど。裁き司が王を建てるというあたりで。
(士師記…旧約聖書の話。士師記の『士師』とは『裁き司』の意味。)
ただ、この巻は聖書的を通り越して堂々と引用してます、聖書の言葉を。この三巻では現実の世界で信じられ、敬われる神がこのネシャンの世界でも同じ存在というのを完全にはっきりさせてます。いえ、二巻ラスト寸前までが世界が二つに分かれて現実の世界の方でしか聖書の引用や話が出なかったからよくわからないのに宗教がかっているような不快感はかえってなくなってますね。
呪われた地…涙の地といわれるネシャンを癒し、救うと言われる別の世界からやってきたという、第七代裁き司のゲシャン=ヨナタン(ジョナサン)は来るべく日に備え、英知の庭で第六代裁き司のゴエルから裁き司の職権の印…超自然的な力を宿すハシェベトの杖の力を使う技術や色々なことを学んでいた。
そして…時は過ぎ、とうとう涙の地、ネシャンを邪悪な創造主とその僕から解放するために旅立つ時が来た。
はい、ネシャン・サーガ、二巻まで出てきたオールキャスト総出演。二巻までは三巻のための伏線、三巻のためのお膳立てに過ぎなかった、この話のための土台、という感じすらする話ですね。
サービスがいいです。話のノリもいいです。
夢中で読んだ…というのは否定しません。面白かったですから。
ラストの方は戦い…と言えるのかどうかわからないけど、感動を呼ぶシーンです。ヨナタン=ジョナサンだったというのも納得できるし、そうでないと面白くなかったもしれない。戦うのでなく、ただ一輪のバラを投げてよこす…あのシーンはなかなか見ものでした。決して屈しないその意思の印…。
ただ…結局ジョナサンはヨナタンとしてずっと生きていくのは少し寂しい気もしなくもなかったけど。捨てたもう一つの世界の自分は…やはり最後で懐かしがるだけで元には戻らないのか…と、少し思ってしまったり。二つの人生を同時に生きることは出来ない…か。
(二巻の最後あたり、参照)
Author&WebMaster : Azusa | 2003年8月11日 | ネシャン・サーガ
ネシャン・サーガ 2 第七代裁き司の謎
Ein phantastischer RomanDas Geheimmis des siebren Richters
ラルフ・イーザウ 著 酒寄 進一 訳ネシャン・サーガシリーズ二巻。相変わらず宗教かかっているところがあるような気がしますけど、これは元ネタが聖書の士師記だったりするからだというのは最終巻の三巻の巻末訳者あとがき参照のこと。
(士師記…旧約聖書の中の王のいない時期に活躍した士師のお話。
なお、士師記の『士師』とは中国語版聖書での記述であって日本語的訳だと『裁き司』だったりする)
呪われた世界、涙の地、ネシャンで神のイェーヴォーから与えられた裁き司の印である超自然的力の宿る杖、ハシェベトを英知の庭に居る第六代裁き司のゴエルに渡す使命をおびたヨナタンは涙の地、ネシャンを解放すると言われる第七代裁き司のゲシャンの当来を待ちわびつつ、英知の庭を目指して色々な仲間と出会い、危険な旅を続ける。
このヨナタンの冒険を夢に見続けるスコットランドの足の不自由な少年のジョナサンはヨナタンの夢を見る度に体が衰弱していく…
…中盤まではかなり手に汗握る展開です。かなり正統派のファンタジーで冒険もなかなかのもの。設定も一巻の時よりもさらに手の込んだものとなり、かなりのめりこみます。
ヨナタンの意思の強さと謙虚さや弱さが主人公としてかなり好感が持てます。
一方、このヨナタンの夢を見る主人公の一人、ジョナサンは…このヨナタンの手に汗握る冒険で少し影が薄い存在になってきます。時々話の途中で腰を折る形でジョナサンの話が登場…という感じがしないでもなし…。かわいそうだけど。しかし、このシリーズの最終章(三巻)を書くにはこの話の腰を折る話を入れないといけなかったでしょう…というのは三巻を読んで初めて気が付きました。
ただ…この二巻を単独で読むと、多分、ヨナタンの話にジョナサンの話が横やりを入れているって感じがしてたまらないでしょうねやはりシリーズは通して読んだ方がいいってことでしょうけど…この辺りはシリーズは通さなくても途中で読んでも楽しい話を書くべきだ!!という方もいらっしゃるでしょうし、やはりシリーズは通して読んで全体の輪郭を少しずつ見出した方が楽しい!!という方もいらっしゃるでしょうね…
賛否両論の分かれるところ。
ただ、最後のあたり直前まではかなり夢中で読んだのはたしか。なかなかこれが面白くて。
ただ…ただ、この二巻の最終章あたりの部分が…感動を呼ぶシーンなんですけど…かなり強引というか…、
『え?そんなのアリですか?』
だったので。
苦しいですね。さすがに…ヨナタンが目に見えていた使命を全うした直後にジョナサンの最後というべきシーンが…感動のシーンのはずなのですけど…確かに感動はしたんですけど…何か少しひっかかりを感じる強引さがあったので。
このジョナサンの最後のシーンは強引に持ってこないでもっと時間をかけていればよかった気もしなくもないですけど…ただあの最後のシーン以外に描き方があったかどうかというのは…わかりませんね。
Author&WebMaster : Azusa | 2003年8月11日 | ネシャン・サーガ
ネシャン・サーガ 1 ヨナタンと伝説の杖
Ein phantastischer RomanDie Taäume des Jonathan Jabbok
ラルフ・イーザウ 著 酒寄 進一 訳ドイツの著名なメルヘン(ファンタジー)作家、ミヒャエル・エンデが見出した作家、ラルフ・イーザウの長編ファンタジー小説。ややRPG的趣のある話です。巻末に『著者による用語解説』なんてものがあったりしてなにかこだわりが感じられます。
…が、正直、この話は用語解説読まなきゃいけないほど込み入ってませんです。どちらかというとこういうのは指輪物語にあった方がいいような気もしなくもないですけど。
その昔、神の息子が父である神の作った世界に見習って自分の世界を作った。しかし神の息子はすぐ自分自身が神としてあがめられるのを望むようになり、自らを『メレヒ=アレス』と名乗り、自分の作った世界の支配者となった。しかしそのうち力不足が露呈してきて創造した生き物たちは悪に染まった残忍なものばかりになり、生き物たちは互いに殺し合いをしたりした。神はこれを見て嘆き、その地を『ネシャン(涙の地)』と呼ぶようになった。神はこの地に七つの呪いをかけた。そして裁きの司に神の力を現す伝説の杖、『ハシェベト』を与え、メレス=アレヒを信仰する邪なものたちを追い払った。
それからかなりの年月がながれ、ある日、少年ヨナタンは森を歩いている時に洞穴に落ち、そこで不思議な杖と出会った…。
…という自分によく似た少年ヨナタンの夢を1920年代のスコットランドで足の不自由なジョナサン・ジェイボックは毎晩のように見ていた。そして夢の中のヨナタンが冒険に出てから次第に現実が夢で夢が現実なのどうかわからなくなってきた。
…あらすじだけではわかりませんね。この話の…ある意味奥の深さが。二人の主人公のジョナサンとヨナタンは…信仰深い人物です。ジョナサンは聖書の神を、ヨナタンはネシャンの世界の神『イェーヴォー』を深く信仰しています。そして実際この二の名前は読み方が違うだけで『同じ』です。ヘブライ語で『神に与えられた』という意味をもつ聖書に出てくる人物の名前です。
二つの世界で信仰に関する逸話が沢山登場します。そしてヨナタンの住んでいる世界『ネシャン』の神はジョナサンの世界の神と同じだというセリフも登場します。そのせいか、ちょっと宗教がかった感じがします。内容的に読んでいい国と悪い国を選びそうな感じです。
それを除けばかなり正統派の冒険ですね。あと夢と現実…実世界と異世界かもしれませんがこれはなんとなくミヒャエル・エンデの『はてしない物語』を思い起こさせます。ただあれほど空想的ではないのですけど。ヨナタンの冒険はかなり過酷ですし、ファンタジーとはいえ、『魔法』は登場しません。不思議な力を持つハシェベトの杖がありますけどいざってときしか使いませんからメルヘンチックでなく指輪物語的なシビアさを持ってますね。ただあれほど込み入ってません。巻末の用語解説集は別に見なくても話がわからなくなるということもないですが読むと面白いかも?
ちなみに日本語タイトルが『ネシャン・サーガ ヨナタンと伝説の杖』になってますけど原題は『Die Taäume des Jonathan Jabbok』ドイツ語で読みにくいのだけど見たところジョナサンがタイトルのメインになってますね。内容的にヨナタンもジョナサンも五分五分に出てますけどね。
Author&WebMaster : Azusa | 2003年5月 2日 | ネシャン・サーガ




