The Room of Reverie
Book Report



村上春樹で読んだ本

東京奇譚集


東京奇譚集

出版社:新潮文庫
著者: 村上春樹

村上春樹の短編集。
この人の短編というと、(私の見た中では)現実離れした、メルヘンがかっている作品が多いという印象があるけれど、この作品集もそれに違わず不思議な話が多い。
最初は随想のようなものから始まり、比較的普通?の話のようなもの、そしてこの方お得意のヘンな話と続いてる。ヘンな話という言い方は大変失礼であるけれど、リアリティーある語りで"アリエナイ"事を、さも"アタリマエ"のように書いていれば、さすがに言いたくもなる(笑)

偶然の旅人
何気ない日常で出会う、不思議な事象について書かれた随想。
というより、村上春樹が日常で目についた不思議な出来事をまとめた小品文ですね。
こうあってくれればいいのに、というささやかな願いが次の瞬間に叶えられたり、赤の他人と出会って起こった出来事が、急に会いたくなった肉親にも起っていたり。
曰わく、ジャズの神様や何かの神様が偶然を装って起こす出来事か?と、思っているそうだ。
で、人に話して聞かせると信じてくれないらしい。
そういう偶然は誰かに話しても、聞く側はつまらなさそうにして流されてしまうだけの事が多いものね。
聞いてもらえる(読んで分かってもらえる)ように、折に触れて書きたくなったのかもしれない。

ハナレイ・ベイ
息子が鮫に足を食われて溺れ死んだ場所である、ハワイのハナレイ・ベイへ、毎年ただひたすらやってくる母親の話。
何と言うか、村上先生、若者言葉を知ってたのですか。いや、多分、監修が入っているんではないかと思うけど、主人公が偶然出会った若い子達のしゃべりが妙に気になったもので。
主人公と若い子のチグハグ会話に垣間見える、世代差というのが妙な味わいを持たせているというか。不幸な話なのに、その部分だけがやたら忘れられない。

どこであれそれが見つかりそうな場所で
行方不明になった夫を捜索してほしいという依頼を受けて、主人公が探す話。
この主人公、職業や素性は作中では分からない。分かるのは独身であるという事だけで、かなり胡散臭い男だ。ボランティアで人探ししながら"何か"を探しているらしい。
雰囲気的にはハヤカワの海外SF短編にありそうな話だけど、主人公の探している"何か"が村上春樹風に曖昧に書かれていて、だから何なのだ? とっととタネを明かしてくれ! と途中で思う。結局具体的に何なのかが分からず、何となく分かったような分からないような、で、終わる。こう、読後の微妙な居心地の悪さみたいなものはこの人の味なのだろうけど、それがある度に消化不良な気分になって困る。まったく、困った作家だ。

日々移動する腎臓のかたちをした石
16歳の頃に父親から「男が一生に出会う中で、本当に意味を持つ女は三人しかいない。それより多くないし、少なくもない」と言われた男が、若い頃に手痛い恋をして、そのあとは後腐れ無く別れられるようにしか女性とつきあえなくなって......というお話。
この話の「本当に意味を持つ女は三人」という言葉はなかなかよく出来てる。
実際何人と付き合おうと、一生添い遂げようと思うまで至り、且つ、思い出に強く残る人ってだいたい三人くらいなんですよねぇ。人によって四人五人居たという方もいらっしゃるかもしれないけど、直ぐに思い出せる、つまり、いい意味悪い意味含めて"忘れられない人"というのは何人と付き合っていても三人くらいしか出てこないんではないかな?
もちろん既に結婚されている人なら最後の一人が側に居るかもしれないけど。

品川猿
東京在住の主婦であり事務職をしている主人公が、時々自分の名前が思い出せなくなってしまう話。正直、これが一番エーーな話。
名前が思い出せない理由が「お猿さんに学生時代の名札を盗られたから」だそうな。かなり荒唐無稽な事情だけど、それを突き止めたのが心理カウンセラーというのがまたヘンだ。
しかも、名札を盗ったお猿さん、普通にしゃべる。
そして、それが当たり前の事のように登場人物達は振る舞う。
ヘンだ。この話、やっぱりヘンだ。

Author&WebMaster : Azusa | 2008年4月24日 | トラックバック(0) | コメント(0) | 村上春樹


蛍・納屋を焼く・その他の短編




螢・納屋を焼く・その他の短編



出版社:新潮社

著者: 村上春樹


村上春樹の短編集。
抽象的にして叙情的な作品が七作品収録されています。本の裏表紙にも「リリック(抒情詩)な七つの短編」と書かれてありますね。私自身はSFやファンタジーなどのリリックよりむしろエリック(叙事詩・史詩)的な作品ばかり読んでいたので彼のこの短編集を読み終わった直後の感想は「オチてない!」「投げっぱなし!」「雰囲気だけで終わり?!」などという、限りなく暴言に近いものであったわけですが。(でも、一番正直な感想ではあります)
ただ、思わせぶりで且つ、雰囲気は凄く良くて、俗物的な私でさえ夢見がちになる幻想世界が広がっていて、ついつい何かがあるのではないかと期待してしまい、そして、結末が曖昧に書かれていたりして派手に裏切られる、というのを繰り返していました。
他の方のレビューで村上春樹が理解出来ない、ということを書かれている方を多く見受けますが、この作家の作品は
「理解するんじゃない。感じろ」
という、どこかの作品で出てくるような台詞が恐ろしく似合っているような気がします。


ノルウェイの森の原型にあたる作品らしい。けど、残念ながら私はノルウェーの森を読んでいない。この短編集の中でギリギリ最後まで期待させて結局なんともならなかったという印象の作品でした。何ともならなかった事は別に悪くはないですが、二人の関係がどうにかならなかったのかという想いと余韻は残りました。

納屋を焼く
思いっきり含みを持たせて終わった作品。
この話に出てきた女性は絶対「焼かれている」と思ったのは私だけではない気が......

踊る小人
生きた象を作る工場、その中で鼻や耳や足を作ったりしている工夫達。そんな世界にその昔、踊りが上手い小人がいて......
なんてファンシーでメルヒェンな世界に男と女の関係やら小人がもたらした災厄やら、メルヒェンでシュールな黒い話になっているというか、「納屋を焼く」の後に来たものだから、村上春樹って実は真っ黒な人......?何て思ってしまったり。

めくらやなぎと眠る女
ちゃんとした結末はなく、甥の通院の付き添いをしている主人公が、ひたすら主人公が昔の思い出に浸って感慨深く語っているという話。まぁたしかに、青春に結末などなく(学校の卒業を青春の結末と言うべきかどうかは判らないが)終わりも見えないまま大人になっていくのが人生ですが。

三つのドイツ幻想
ドイツにまつわる幻想について、限りなく随筆に近い形で書かれいる。
この話が暗示しているのがセックスだったり、兵どもが夢の跡だったり、そういうのが見えるのだけど、書かれた意図があまり見えず、思わせぶりかつ、放り出されたまま感が残ってしまうのが何とも。
悪く言えば、「何が言いたいのか判らない」
多分、セックスや盛者必衰の事だとは思うけど......外れてるかな?

Author&WebMaster : Azusa | 2008年3月11日 | トラックバック(0) | コメント(0) | 村上春樹


スプートニクの恋人


スプートニクの恋人

出版社:講談社
著者: 村上春樹

村上春樹

村上春樹にとって何冊目の本になるのか分からないけど、私にとっては初めて読む村上春樹の作品。
"恋人"と題されているだけに恋愛小説だと思ったけど、確かに恋愛小説だったけど、かなりクセがある。
まず、一人称で語り手が男性。その語り手の男性がひそかに愛している女性(すみれ)が恋をした話を語っているのだけど、そのすみれが恋した相手が年上の"女性"(ミュウ)という、何とも言えない状況の話で、初っぱなから予想を大きく裏切られた。
しかもそのすみれがかなり偏屈な性格で、皮肉っぽく世間一般の凡庸なものをハナから相手にしないゆえに世間知らずで、憧れていた小説家になるべく貧乏で隠遁(いんとん)な生活をしているという、まるでオタクかマニアのようだ。(オタクではないが)そんなすみれはミュウに恋をして偏屈な性格や行動が随分と人並みの姿になっていったように見えたが、女性に恋しただけに節々にどこか倒錯した所があって、彼女を愛している語り手の男性が時々気の毒に見えた。とにかく彼女が話をひっかき回しているというか、話の中で嵐のようにドタバタしていた。
そんなすみれがある時ぷっつり消息を断ってしまったのだけど、消息不明になった経緯がまるで別世界があってそこへすみれは行ってしまったような、そんな不可思議な事が描かれていた。途中までわりとリアルな世界(現実世界)での話のような描かれ方をしていたのに、あるかないか分からない物が登場したりしなかったりする混錯した終盤が、この話がファンタジーのようなものなのかなぁと思ったり思わなかったりした。それともこの現実の世界で説明のつかない不可思議な事象を描いていたのかなと思ったが、どうなのだろう?

ラストは友人曰く、『村上春樹にしては珍しいラスト』らしいけど、私は村上先生の本はこれが初めてなので他のはどうなっているのか残念ながら知らない。
なんか、投げっぱなしにされたような、そうでもないような。とにかく何かはっきりしない物が頭の中にもやもや残っているようなどう説明すればいいのかよくわからない余韻が残った話だった。

Author&WebMaster : Azusa | 2008年1月29日 | トラックバック(0) | 村上春樹


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