時代小説で読んだ本
孤狼剣
出版社:徳間文庫
著者:上田秀人
前回の竜門の衛の続編。
タイトル的にシリーズものとは思えないのだけど、、前作が作者にとって初の作家単独の文庫化作品で、続編を出せるか分からなかったからかもしれない。公式サイトがあるから問い合わせても良いような気もするけど、お忙しそうな感じなのでやめておく(笑)
前回、江戸時代の八丁堀同心だった元八郎は将軍世継ぎ問題に絡んだ幕府の危機を救ってからというもの、無為な御家人生活を送っていた。そこへ、吉宗=幕府から蟄居を命じられた尾張藩主・徳川宗春がその事を根に持ち、吉宗への復讐を果たそうと己が忠孝の士である尾張柳生を吉宗の子・家重の暗殺に向かわせるが......
前半は尾張柳生の暗殺者が家重を暗殺する為に七転八倒し、それを元八郎が防衛する、という内容でした。
ところが、途中から朝廷と幕府とのいざこざが起っていて、それを解決すべく、主人公の元八郎さんは奮闘し......という内容に。
徳川宗春さんの復讐劇は????
一応、朝廷とのいざこざを解決する為に京へ上って行った主人公を、ことごとく暗殺を邪魔された柳生のものが追いかけるという内容はありました。でも、最後にはフェードアウトしてしまっていた。
何と言うか、異なる二つの話があって、片方の話がちゃんと終わらないうちに別の話に切り替わった感があり、それがまとまりの無さになっているような気がして仕方がなかった。
そしてちゃんと終わらなかった片方の話は、ラストシーンで取って着けたように決着させたのが何だかなぁ、と思ってしまったのですよ。
殺陣とか良かったですよ。陰謀とかもそれなりに良かった。
でも、前作が全体的にまとまった話で良かっただけに、このまとまりの無さは惜しいなと思いました。いっそ、「家重暗殺編」と「朝廷vs幕府騒動編」とで話が分離させていたら良かったのにと思わなくもなかったですね。
まぁ、まだまだ続編があるので、そちらに期待です。
Author&WebMaster : Azusa | 2008年6月 2日 | トラックバック(0) | コメント(0) | 時代小説
竜門の衛
出版社:徳間文庫
著者:上田秀人
徳川吉宗から長男・家重の時代への過渡期の頃を舞台に、将軍世継ぎに絡む、幕府はもとより、朝廷までも巻き込んだ権力争いの中で、一人の御家人(旗本・御目見以下の将軍のお目通りが出来ない直参の者)が活躍する、という内容。
ハヤカワSFやファンタジー小説、恋愛小説等々、まったく真逆のジャンルを好んで読んでいた私からすると、時代小説なんてまず読まない(手をつける予定も無かった)のだけど、父が時代小説好きで、特にこの作家のファンでしてね。熱心に話をする上に、かなーりしつこく勧めてきまして、読む事になりました。
一応、時代小説は手をつけた事が無いというわけでなく、2.3作ほど読んだ事はあるのですよ。ただ、キヨスクの文庫本の本棚に置いてあるようなもので、作家の名前も思い出せないのだけど、内容が、ことあるごとに刀を抜いては、殺陣と芸者と茶屋の娘と通りすがりの町娘となにやら......の、繰り返しで、物語がそれだけで出来ているとさすがにうんざりしてくるというか。今はそうでもないようですが、ちょっと前の大御所以外の時代小説の新作って、そういうのが結構多かったようで、そういう所で当たりどころが悪かったというか。
とはいえ、大御所の先生方だと、渋くてごつい剣客が真剣勝負!男の美学とロマンーーのような、汗臭そうな内容のような感じもしましたし、普段がハヤカワと恋愛小説ばかりの私が手を出す筈もない(笑)
(うちの旦那は「それがいいんだよっ!」と、力説しておりますが。)
閑話休題。
紆余曲折で読んだこの作品ですが、案外面白かった。
案外、という言い方も失礼ですが、少し前にあった安直な芸者や町娘を絡ませて殺陣を見せればいい、というような内容でなく、時代背景もよく分かりましたし、陰謀あり、様々な旗本や大名が暗躍し、刺客が、将軍が、世継ぎが、と、お膳立てあって、そこでようやく奇麗な芸者が耳打ちをし、殺陣があり......
実際は「奇麗な芸者が耳打ちをし、いきなり殺陣があり、その後にお膳立て」ですが(笑)
土産をもって能天気に実家帰りをしようとした主人公へ、唐突に芸者が耳打ち、実家に行けばいきなり曲者、というのも虚をつかれて良かったのですね。出だしというのは、あまり小難しくダラダラと書かれていると取っ付きが悪いし、読む勢いが萎えて辛くなりますから。
ちょっとだけ、昔の地名や役職名に混乱気味になりましたけど、あまり一般的に知られていない事には説明もありしたし、雰囲気だけで何をしに、何処へ以降としているのか分かるのでこのあたり流しながらでも十分読めますね。
ところで、昔の江戸のお風呂屋さんって、女風呂に刀掛けがあったんですねぇ。
御家人さんの役得って、いいですね(笑)
気になる点としては、とりあえず、甲賀組の方々を殺し過ぎです(笑
作中にも書かれていますが、忍者を一人前に育てるには適正もあり、血の滲む努力もあり、何より甲賀忍者はたしか、集団での活動が得意だったはず。あまり殺しすぎたら次の活動が出来なくなるんじゃ......? というより甲賀の皆様がたった一人相手にこんなにケチョンケチョンにされて哀れだなぁ、と。
実に大した事の無い、とても個人的な所感ではありますけど。
あと、宝蔵院ですか。
主人公の使う刀術は「宝蔵院一刀流」なのですが、この宝蔵院、作中でも書かれている通り、槍の流派で刀術は無く、この作品中での創作ですが、解説が非常に簡略され過ぎていたことかな?
あまり簡単に説明されると、こう、凄い流派ではないような気がしまして。
そんなに簡単に解説しないで、この剣術の伝来にこんなこんなこんな込み入った事情があって、さらに主人公に伝わるまでの経緯が実はこんな風でこんな風で......というのがあると、刀を振るうシーンがもっと楽しめたのになぁ、とは思いました。
もっとも、全ては「そうあってくれたらいいなー」程度の願望です。
それと、前向きな事を言った後に文句が言いたくなるのは次に期待している、という意味です。
つまり、結局の所、「面白かった」のですね。
そんなわけで、父よ。結構面白かったよー(笑)
次に期待しますわ。
公式サイト
三文文士の部屋
Author&WebMaster : Azusa | 2008年5月14日 | トラックバック(0) | コメント(0) | 時代小説





