The Room of Reverie
Book Report



ドキュメンタリー・ノンフィクションで読んだ本

ソロモンの指環 動物行動学入門


ソロモンの指環

出版社:早川書房
著者: コンラート・ローレンツ

生まれたばかりの動物、特に鳥類で見られる、動いているものを親だと思い込み、一生愛着を持つ"刷り込み"を発表し、1973年にノーベル生理学・医学賞を受賞した、動物行動学者・コンラート・ローレンツによる、動物の行動学を一般向きに分かりやすく書いた本。
全般的にローレンツが自身の家に飼い、育て、観察・研究していた動物たちとのエピソードに解説をつけている。それに、飼うのに適した動物とは何かというのを紹介したりしている。

前書きでローレンツがこの本を書いたのは、(1949年当時)巷で動物を描いた本や、動物について解説されている本の、あまりにいい加減で思いこみによって実際のものとかけ離れて書かれている内容に、怒りを感じて筆をとったらしい。
1949年といえば、先進国ですらも一部ではまだ寓話・伝説・迷信がそれなりに信じられていた頃ではないだろうか? 昨今でさえ、何となくあり得そうな事なら嘘や噂がまことしやかに信じられるし、当時ならなおの事、いい加減な想像の産物が本当であると思いこんで書かれる書物があってもおかしくない。そこへ、真実の証明と言わんばかりに果敢に挑む姿勢は研究者肌故だろうか?
とはいえこの本、それほど小難しくは書かれてない。さすがに大学の教授なだけに、改行なしで文字をいっぱいいっぱい詰めて説明していたけれど、自身が目の当たりにしたエピソードを難しい言葉を使わず、難しい言葉が出て来てもそれにきちんと解説をして書いている。おかげさまで、私もこの本から知った事がいくつもあった。
あと、一見人間とかけ離れた行動をしているように見える動物でも、案外人間にも見られそうな心理行動があったり、またそういう風に取れるようなものも沢山あった。意外に人間も「動物だなぁ」と思えてくる。
それとは逆に、動物の方が同族に対し、武器(牙や爪)を扱う時、モラルをもって扱っていたりするようなのもある。高等動物になるほど同族に牙を剥くのはタブーで、噛みたくても噛めないらしい。たしかに種の保存的に、見境無く同族に牙を剥くとあっという間に滅ぶ。で、人間はというと、わりと情け容赦なく白旗を揚げる敵にも刃を向けられる事が多いのは歴史に見て取れる。ただ、人間が人間に刃を向けるのはモラルが欠けているだけでなく、種の選択保存(自分の血族を選択的に残す)という事もあったりするのだけれど。高等動物でも実はライオンや一部の猿など、雄がハーレムを乗っ取った時に前の雄の子を全て殺したりする事があるらしい。
そのあたりの事はこの頃発見されていないのか、それともローレンツがまだ知らなかったのか、書かれていない。私も詳しく調べてないので伺い知る事が出来ないのだけど、そこの所、どうなのだろう?
それでも、一般人が知る事もなかった動物の独特の行動や、意味不明に見えるようで実は意味のある行動だった、等々、相当な数を知る事が出来るのは有意義だと思う。
先に言った通り、「案外人間にも見られそうな心理行動」があったりするのでね。

Author&WebMaster : Azusa | 2008年4月20日 | トラックバック(1) | コメント(0) | ドキュメンタリー・ノンフィクション


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