日本の作家で読んだ本
赤い長靴
出版社:文春文庫
著者:江國 香織
江國香織の恋愛小説......と、言えるかどうか怪しい、一組の夫婦の日常を描いた連続短編集。
この夫婦というのが、十年寄り添って子供無し。家庭内では妻・日和子が夫にどうでも良い井戸端会議的な話題を一方的に話しかけて、夫・逍三はそれへ生返事を返してまともに話を聞いていない、という日々を過ごしている。
夫・逍三は妻の口にする話題はまったく興味もなく、本当に聞いていない。会社から帰って来て口にするといえば「腹減ったな」とかそんな事ばかり。他に何か会社で起った事とか、新聞で見た印象に残った記事とかの話題はないのかと思うが、そういうのをしゃべるのがまったく好きでないらしい。
とはいえ、逍三は日和子の事をそれなりに大事にしていて、クリスマスになると赤い長靴にお菓子が沢山つまったプレゼントをあげたり(「箱」)、バザーの時に彼女に何かを買ってあげたりもしている。が、これが実は日和子にとって不評だったりすけど、彼女はその不満を口にする事なく諦めたようにクスクス笑いをして「逍ちゃんって面白いわね」なんて言って茶を濁す。
表紙裏には"透明な文体が切り取る夫婦の情景----"と書かれているけど、むしろ、
"相手の存在が時々無意味にすら見える、空気のような夫婦関係の日常"
に見えるのは私だけ?
なんというか、倦怠期なのか、元々そういう関係の人たちなのか、よくわからないが、夫婦関係と結婚生活でそういうエピソードが延々と続く。正直、この夫婦描写、端から見ていてあまりうらやましくない。
旦那がだらしなく、言う事聞かなくて、小言言っても聴かなくて、諦め入ってしまうとか、そういうあたり、共感を持てなくもないし、勘違いな思いやりで迷惑被るあたりも分からなくもない。ただ、私だと、自分が振る話題を旦那にことごとくスルーされたりしたら面白くないし、「独り者に戻る?」とか、「結婚した意味ないわね」とか、嫌みの一つでも言いたくなるけれど。
もっとも、ここに出てくる妻・日和子さんは、無視される度に「本当の事は言えない」だとか「こういう人なのだ」とか言って、達観している。おかげさまでそのあたりが少し、苛ついた。
まぁ、夫・逍三が私にとって好きでないタイプだし、妻・日和子もそんな夫に対して日々不満を持ちつつ諦め、いい人顔しているのが好めない。
私だと、こんな状況で十年なんて耐えられないですね。
ただ、この話の二人、辛うじて関係を保っている、という風に見えないのが不思議ですね。
多分、テニススクールに通う妻に一切の興味も表さなかったのに、妻のテニスをしている姿を仕事帰りにフェンスからこっそり覗いていたり、妻に嫌々持たされたバナナを食べずに持ち帰ったけど、痛んでいるのにも拘わらず結局食べてたり、そういう姿などがあったりしたからでしょうかね?
こういう瞬間を見ると、ほだされてしまうというか。
なんだかんだ言ってこの話の夫婦、続きそうな気がしましたわ。
公式サイト
イングリッシュ ローズィズ
Author&WebMaster : Azusa | 2008年4月30日 | トラックバック(0) | コメント(0) | 日本の作家
あなたがほしい
出版社:集英社
著者: 安達千夏
男を抱く事をできても、愛せない。女を愛していても、抱き合うことをおそれてしまう――
という背表紙のあらすじを読まずに「文学系の恋愛小説かな?」と思って購入したら、たしかに恋愛小説ではあるけどちょっと違うという、第22回すばる文学賞受賞作。すばると言えば、直木賞作家の熊谷先生がジャーナリストの書いた記事から表現を無断借用したと訴えられ、掲載中止になったことで話題になりましたね。
私がこの本を読んだのは「スプートニクの恋人」の読了直後で、これも女性が女性に恋するという内容で、若干食傷気味になっていたおかげで痛手だった。というより、その払拭のつもりで読んだのに見事にハズれたというか。そのあたりは私が内容を把握しないで読み始めたのが悪い。
さて、このお話、大手の建て売り住宅建築会社の営業職についている主人公「カナ」が、中年男性の建築家と肉体関係を持ちつつ、年下の女子大生に同性愛的性愛を感じているという困った筋書きで、さらに冒頭から男女の絡みのシーンがあり、それが割と具体的で、それを女性作家が書いているので困ったものです。困った困った言うと、さもこの作品が問題ありきな作品のようだけど、『私』が『普通の恋愛小説』を期待していて、『普通の恋愛小説』を読みたかったからであって、覚悟の上で読んでいれば困らなかったのでしょう。本当、困ったものだ。
その男女の絡みシーンだけど、描写はわりと内田春菊に通じるものがある。一人称だったからというのもあるけど、同じ女性作家だからというのも無きにしも有らず。グロくならない程度に具体的で赤裸裸、というあたりがそう。ただ、内田春菊の方は私小説家だからなのか、主人公とその男だけしかいないうよな世界観で、二人の(布団から)半径1メートル以内の空間で話が終わっているような印象がある。だけどこちらの方は男を下に敷き、冷めた目で男とその周りと世間を見下ろしているような印象がある。
でも、この話はそんな男女の絡みの部分だけでなくて、家族のあり方や愛情のあり方について描かれているのが
興味深かった。世間一般に言うところの「普通の家族」は結婚した夫婦が居て、子供が居て、安心して帰る家(場所)があって......だけど、このお話ではそういう世間一般で言われるようなものでない、女性同士、結婚してない男女同士であっても「家族」という安心して帰れる居場所を得たいと登場人物達は願っていた。そんな姿は、こういうのもあっていいかな?という気になった。このあたりで普通の恋愛小説が読みたかったはずなのに、ちょっと負けた気もした(笑
Author&WebMaster : Azusa | 2008年3月17日 | トラックバック(0) | コメント(0) | 日本の作家




