The Room of Reverie
Book Report



ジェイムズ・ティプトリー・Jr.で読んだ本

すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた


すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた

出版社:早川書房
著者: ジェイムズ・ティプトリー・Jr.
翻訳: 浅倉 久志


ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア (著), 浅倉 久志 (翻訳)

SFでは奇異で野心的な作品を書いているティプトリーのファンタジー連作。世界幻想文学大賞を受賞したらしい。
舞台はメキシコのキンタナ・ローの海辺でマヤ族をメインに話が展開する。ティプトリーのCIA時代の経験(マヤ族について調べていた)が生きているらしく、彼らの特徴などがかなり細かく書かれている。一人称で描かれているのだけど、まるでティプトリーが自分自身で語っているようだった。(男性の一人称ではあるけれど。ティプトリー自身は女流作家)
描写などはかなり美しく、実際キンタナ・ローでダイビングしてみたいという衝動に駆られてしまった。ただ、マヤ族とアメリカ人(グリンゴと現地で呼ばれている)はあまり仲がよいわけでなく、確執というか、隔たりを感じるような場面描写を垣間見るだけに、どこかよそよそしさも感じる。
どっちにしても、情景、描写、雰囲気、何を取っても良い話だった。

リリオスの浜に流れついたもの
キンタナ・ローの浜辺の近くに住んでいる主人公の元へグリンゴ(アメリカ人)の青年の話。旅の途中で主人公に水を求めていたが、一緒に食事もすることになり、その時に青年が漂流していた女性(と思ったら男)を助けた体験談を話して聞かせるのだけれど、その話がまるで青年の妄想か想像か、実際の話かまるで判らないような話で、青年が見た女性のように美しい男性というのはキンタナ・ローで見た幻か? 最後はやはりこの青年、海の中に消えたのか? 何とも言えない余韻が残った。

水上スキーで永遠をめざした若者
遠出してダイブに出かけた主人公が出かけた先で知り合いの漁師と会い、そこで語られる話。
漁師に出会うまでに見つけた珍しいロブスターの列を自分の中だけの秘密にしておきたかったのだが、たまたま会った知り合いの漁師の金の工面に喘ぐ様子に、その事を教えようか迷って結局教えてしまったというあたり、人は綺麗なものや自然界の神秘を守るよりも先にしがらみや人とのつながりを優先してしまうエゴのある生き物だというのを自覚されるようだった。
で、肝心なタイトルになっている水上スキーで永遠を目指した若者そのものはといえば、「えーーー」なものになってしまったあたりが意外というか、本当にそんなものになってしまったのだろうか?

デッド・リーフの彼方
主人公が行き着けのレストランで出会った男から「デッド・リーフ」という珊瑚礁について聞いた話。
人が捨てたゴミが自然界に蓄積して、それが怪奇な現象を起こした(ような気がする。事実かどうか判らない)という何とも言えない話。海は人間がどれだけ干渉してもミステリーな世界という事ですかね?

Author&WebMaster : Azusa | 2007年12月14日 | ジェイムズ・ティプトリー・Jr.


たったひとつの冴えたやりかた

たったひとつの冴えたやりかた

出版社:早川書房
著者:ジェイムズ,ジュニア ティプトリー
価格:¥ 756

The Starry Rift

出版社:Tor Books
著者:James Tiptree

The Starry Rift
ジェムス・ティプトリー・Jr. 著 浅倉 久志 訳

往年のティプトリーの作品。ノスタルジックで古典的な雰囲気と感動を呼ぶストーリーが心地いい作品。ステレオタイプっぽいようなそうでないような感じや、センチメンタルな趣きはあるものの、読みやすく、なおかつ馴染みやすいストーリー展開でSFを読まない方にもお勧めの作品ではないかと。
(と、いうか、SFを初めて読むならこの本をチョイスすべきだったと私自身後悔。いきなりディックは苦しかった.....。)
ストーリーは中編の連作が3篇。異星人がヒューマン(人間)の『リフト(RIFT)』という場所で起こった昔のできごとの書物を宇宙の図書館で借りて読んで行くというくだりからはじまるもの。
第一話の『たったひとつの冴えたやりかた』の印象が強過ぎて他の二話(結構面白い)の印象が薄くなってしまっているのが惜しいところだけど。

第一話 たったひとつの冴えたやりかた The Only Neat Thing To Do
宇宙で偉業を成し遂げた英雄や偉人達に憧れ、前人未到の星々を巡る事を夢見て親に内緒で辺境の宇宙へ旅に出た元気で活発な十代の少女(コーティー)と、見知らぬものに憧れを抱き宇宙に旅に出た、生き物の頭の中に暮らすとても若く小さなエイリアン(シロベーン)との出会いと友情の物語。
話の読みやすさ、互いに好奇心旺盛な少女とエイリアンとの会話がとても楽しい。二人が互いにあまりよく知らない同士なだけあって、読んでいるこちらもこの二人の立場になったように見知らぬ世界に好奇心をそそられます。
ただ、後にこの二人に重大な危機と決断を迫られた時にこの二人の好奇心も将来の色々な夢も、何よりも友情も哀しくなりますが。
そして、少女(コーティー)が選んだ『たったひとつの冴えたやりかた』を別のかたちにしろ、自分が選べるかどうかはわからないけど。

第二話 グッドナイト、スイート ハーツ Good Night, Sweethearts
過去に宇宙で起こった戦争で戦い、今は独立して宇宙のサルベージ船の船長をしている男と初恋の女性との再開の物語。
センチメンタル.....、という言葉がよく似合う話....かな?とか思ったり。
ただ、途中での戦闘などがあったり盛り上がり箇所がちゃんとあったりするのだけど(ただ、戦闘までの所までだとちょっとありがちな話っぽいのだけど.....。)オチがちょっぴり切ないかな....?
ハッピーエンドしきらないところが逆に良かったと、個人的には思ったり。

第三話 衝突 Collision
ヒューマン(人類)と異星人との緊迫したファースト・コンタクトの物語。
見るべき所は互いに言葉が通じない状態で全面戦争の危機が迫っている間にやや偏見とプライドを持っている言葉がろくに通じない異星人の船長と人類の船長との緊迫したやり取りとコミュニケーションでしょうか?
危機が迫り、ハラハラさせながらコミュニケーションが上手く取れない、言葉の通じないそんな場面の微妙な部分まで描写されながらもテンポ良く話が展開していくのが面白かったです。

....で、結局この本、最語まで私にとっては結構ツボだった話でした。
あー、面白かった。

Author&WebMaster : Azusa | 2005年1月 2日 | ジェイムズ・ティプトリー・Jr.


愛はさだめ、さだめは死

愛はさだめ、さだめは死

出版社:早川書房
著者:ジェイムズ,Jr. ティプトリー
価格:¥ 756

Warm Worlds and Otherwise

出版社:Ballantine Books (Mm)
著者:James Tiptree

Warm Worlds and Otherwise
J・ティプトリー・ジュニア 著 伊藤 典夫/浅倉 久志 訳

はい、異彩のSF作家、ジェームス・ティプトリー・ジュニアの短編集です。
多分このタイトルでエヴァを連想された方はエヴァの2002年新作劇場用の予告ポスターの『アイはさだめ、さだめはシ』のこととか考えてらっしゃいますね?
もちろんそんな映画作ってないし、エヴァのオリジナルを作ったガイナックスのオフィシャルサイトでも言ってます。こちらで。
ちなみこのポスターの詳細はこちら↓
2ch エヴァ板支援サイト
エヴァ版支援サイトのポスターの解説
で、多分見たい、もしくは見たことある画像はこちら↓
アイはさだめ、さだめはシ
海外でも話題になりましたね。この画像は。

それはいいとして、この本の内容自体はかなり濃いです。少し引く人もいるかもしれない…というような印象を抱くかもしれないようなそんな感じです。
ただ、内容的にSFという枠を広げるような発想や話が多いです。
色々な実験みたいな感じのことをした作品だと思います。人間以外の異生物、エイリアンなどの独特の思想、価値観、生態系などを盛り込まれた話や人間の心理の奥底を見るような作品が多いです。


すべての種類のイエス All the Kinds of Yes
エイリアンが唐突に地球にやってくる話。
そのエイリアンを利用しようとしている…一種の組織?それとも集団?わからないけとカルト的な感じのする人たちがエイリアンを取り巻いて話は進んでいきます。アメリカどこかでありそうなありえない話という…なんとも奇妙な印象を持ちました。

楽園の乳 The Milk of Paradise
…行方不明だった少年がある星から助け出され、そしてその星での記憶を消され、大人として成長してから再び、その星に帰る話…
…この話を見ていると、狼に育てられた少女を思い起こさせます。どれだけ校正させようと小さいころに受けた印象は…
そう簡単には消えない。


そしてわたしは失われた道をたどり、この場所を見いだした

And I Have Come upon This Place by Lost Ways

多数の科学者と共に一人の科学者が宇宙船である星にやってきてそして他の科学者達が認めないものを見つけ出した話。
タイトル通りの話です。ただ…人間のエゴはいつも何かの可能性を潰す…というイメージがふと沸き起こりました。
そういえば…あまり関係ないかもしれないけど、ある大学教授と製薬会社でガンに有効な薬が開発されたのに当時の厚生省にアポがないから何年も何年も認められなかったという話…思い出しました。

エイン博士の最後の飛行 The Last Fight of Doctor Ain
エイン博士が鳥に餌を撒きながら最後の旅にでる話。
エドガー・アラン・ポーの短編、『赤死病の仮面』と、
『劇場版 起動警察パトレーバー/amazon.co.jp』
を思い出した…
『赤死病の仮面』は擬人化された病気の話でパトレーバーは故意にコンピューターウィルスをOSの中に作った天才プログラマーの話だけど通じる部分はあると思う。
超短編だけど最後に残る全ての人々の破滅の暗示。
世の中には人や枠組みを滅ぼしたいと思うヒトがどこかにいる…かもしれない。
まるで破滅は再生への道…と思うように。


乙女に映しておぼろげに Through a Lass Darkly
多分、未来から来たであろう少女が現代の男の人(リポライターか、記者?)と会話する話。
超短編です。
未来から来た少女の話し言葉や価値観がかなり今と違うので相槌をうつ方も適当に受け流している。
私達も100年も昔に行けば…そうなのかもしれない。同じ日本語でも通じない言葉、通じない価値観…あるんじゃないかな?


接続された女 The Girl Who Was Plugged in
河出文庫から出ている1970年代SF傑作集の中にも収録されている作品ですね。
ブスで追っかけでオタクな感じの女が自殺未遂を図ってそのままある企業へ運ばれ、その脳は別の体…美しい少女の体と繋がれ、そして美しい体に接続された女は色々な場所で人々に愛でられながらその企業の広告をしていく…
という話だけど…
この本の中でもっとも傑作と言える作品。
何か、自分自身の映し鏡のような作品。女の私としては少しイヤな気持ちを野超してくれる作品です。


男たちの知らない女 The Women Men Don't see
ある男が釣のために飛行機である娘と母親の親子と偶然乗り合わせてその後、飛行機は墜落。助かったものの、落ちたのはマングローブの中…
…男たちには理解できない女の生き方…みたいなものが書かれている。
ここでなんとなくジェームス・ティプトリー・ジュニアが女性作家だったという印象がわかるような気もしなくもない。(ペンネームは男性だけど女性なんです)
この世界は男の世界。男の世界の中で女はそのスキマで生きている…というのは…
私も少なからず共感してしまったりしたので…
ただ、この話の中の親子のやり方はわからない。ただ、この世界の外に出れるチャンスがあったら私も出て行くかもしれない…そんな気持ちになってしまった。


断層 Fault
異星で犯罪を犯した男が異星人からその男だけ時間の中に取り残される刑を受ける話。
この刑や…いや、話のノリがなんとなくフィリップ.K.ディックの短編でも読んでいるような印象がして…妙な皮肉混じりのあたりが。


愛はさだめ、さだめは死 Love Is the Plan the Plan Is Death
この本のタイトルになっている話ですね。
どこかの星の…どこかの蜘蛛のような生物の生態系の話。
一人…いえ、一匹?の男が小さな幼い赤…い兄妹?いや、どこかで拾ったものかもしれない。多分少女だと思う。を守り、そして愛して、そしてさだめ…多分この場合は死だろうか?にあらがい、結局彼女を愛し、そして彼女に食われる…
愛することはさだめでそして死はさだめ…
まるで『男たちの知らない女』とは逆の話なのだけど…
違う生態系で違う生き方で違う価値観なのに男は女に食われて生きていく…そんな印象が。
でも…あながち、そうかも…。『男たちの知らない女』流に言えば男の世界のスキマにしか生きれない女だけどその男を食うのが女…とも言えなくもない気もする…。


最後の午後に On the Last Afternoon
異星に不時着した宇宙船に乗っていた人々がそのままその星に住み着いた話。その星に住んでいる怪物のような生き物達が彼らの住んでいるコロニー…集落にやってこようとして人間として生きようと化け物のような生き物達に立ち向かう…
これは人間が人間らしく生きようとする事と…もう一つ、人間の心のあり方について語っている話で…もし、死が差し迫ったら…本当に愛とはどういう風に感じるのか?
…わからなくなってくる。人間性と愛が。

Author&WebMaster : Azusa | 2003年9月17日 | ジェイムズ・ティプトリー・Jr.


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