The Room of Reverie
Book Report



フィリップ.K.ディックで読んだ本

マイノリティー・リポート ディック作品集

マイノリティ・リポート―ディック作品集

出版社:早川書房
著者:フィリップ・K. ディック
価格:¥ 672

MINORITY REPORT
フィリップ.K.ディック 著 浅倉 久志・他 訳

スティーブン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ主演の映画化されたフィリップ.K.ディックのSFの短編、『マイノリティー・リポート(少数報告)』と他全七編の短編集。中には映画化された『記憶売ります』も収録。


マイノリティー・リポート The Minority Report
元々の日本語のタイトルは『少数報告』だったのですけど映画化された(この本が発行された時は企画段階だったけど)ためかタイトルが『マイノリティー・リポート』になった短編小説。映画を見た人はどんなのか知ってますよね?予知能力者(プレコグ)を使うことによって殺人事件を事前に予知して犯行前に逮捕するようになった近未来のお話。
不幸にもその予知能力者を使って防犯をする犯罪予防局の長官のちょっと最近ハゲ気味、中年太り気味のアンダートン(トム・クルーズが演じてました…イメージが…ι)が殺人予知されてしまって逃げまくるのですけどこの逃げた後が映画と小説と違います。
映画では三人のプレコグのうち二人は主人公が殺人を犯すといい、一人は殺人を犯さないと言って主人公は自分は殺人を犯さないという一人の報告(『マイノリティー・リポート(少数報告)』)を得て証明しようとして、最終的には殺人は犯さずに犯罪予防局は解体されてめでたしめでした。
でも小説の方は主人公は最終的には殺人を犯します。そして三人のプレコグが主人公の行動や感じたことによって次から次へと予知を変えていって三人が三人とも違う報告をしたので三人共々『マイノリティー・リポート』という皮肉めいたオチです。そして皮肉のこもった主人公の捨てセリフのラストが映画よりも面白かったかも?と感じたりしてます。

ジェイムズ・P・クロウ James P.Crow
ロボットが人間を支配世界で人間も受けられるけどロボットしか受からないような超難い試験に次々とクリアして昇進していく人(ジェイムズ・P・クロウ)のお話。
でも未来を(ちなみに過去も)見ることの出来る機械で実はカンニングしていたというとんでもないヒト。結局大昔、人間が戦争で人間自身の文明を崩壊させてロボットが支配するようになっただけというのをその機械で証明してロボットを世界(地球)から追い出してしまう。
ロボットが完璧なやり方で支配しなくなった地球で人類は果たしてちゃんとやっていけるのか?といういやな疑問を残して終わるのでやはり皮肉めいてます。


世界をわが手に The Trouble with Bubbles
誰でも育てることの出来るシムアースならぬミニチュア宇宙の『世界球(ワールドクラフト・バブル)』が爆発的に流行っている未来のお話。
この『世界球』は誰が上手く『世界球』を育てたかコンテストがあってコンテストで優勝した人は何故か『世界球』最終的にはその『世界球』をぶち壊すという奇行に走ってしまう。連鎖反応的にコンテストに参加した人たちはみんながみんな自分の育てた『世界球』をぶち壊してしまったりする。
世界球の中にも文明が発達していて人が住んでいるのにそれを壊すのはおかしい、ということで『世界球』を違法にしようと立ち上がった主人公。
なんというか人間のエゴといいますか、行き場のない憤りというか力を気ままな神様気分的に『自分の育てた世界を壊す』というあたりが皮肉にも人間の本質を暴いていたりしてます。
…で、これのオチは多分、多分ですよ?その『世界をわが手に』の世界そのものも実は『世界球』ではないか?というイヤな予感を残して終わります。自分達が世界を簡単に壊してしまうのに自分達がその当事者になるなんてなんて皮肉めいたお話でしょうね。

水蜘蛛計画 Waterspider
上記までの作品が妙にブラックユーモアめいた話ばっかだったのにこれは妙に愉快な話です。
遠くの宇宙へ宇宙旅行をする課程でどうしても人が2.3センチまでちぢんでしまう(光速移動のために質量が失われ、ちぢんでしまうらしい…ということは最後にはなくなるのか?)という問題があって困っていた未来の人たちが過去の世界で予知能力者(プレコグ)たちが定期刊行物を出してそこの中に論文を書いたりしていてその論文の中にこのちぢんでしまう問題を解決しそうなものが発見された。そこでタイム・ドレッジ(タイムマシンですね)でそのプレコグを連れ去ってちぢんでしまう問題を解決させる公式を考え出してもらおうとする。
…が、皮肉にも未来の世界で言うところのその予知能力者(プレコグ)というのは今でいうところの『SF作家』たちだったりする。
連れ去ったSF作家に無理やり公式を書かせるために彼らにとっては博物館もののタイプライターやコーヒーやらなんやらをあてがったりして無理やり論文と公式をひねり出させようとするが結局、オチはそのタイム・ドレッジで旅したSF作家がそれをネタにSF作品を作って実はそれが未来において発見された論文だった…とかいうパラレルワールド的嫌だけど面白いお話です。

安定社会 Stability
超短編です。ディックのデビュー作。超安定した社会で主人公が発明した覚えのないものを発明したことにされていてそれは安定社会に不安定要因を与えるものだということで却下されたがその発明されたもの(ガラスの都市のようなものの入ったブンチン)は実は機械生物たちの仕組んだワナで安定社会は主人公がガラスの都市を開放することによって崩壊。そして今日も機械生物たちのために人間は奉仕する…。
皮肉です。そして主人公は最後に一言、『おれは受け持ちの機械にあんなに忠実に奉仕してきたじゃないか?』

火星潜入 The Crystal Crypt
火星には火星人が住んでいて(この世界では移民じゃないです。人間と見た目はそんなに変わらないです。)地球とはあまり仲がよくない。火星に来ていた地球人は火星と地球のぎくしゃくした緊張状態のために一人残らず地球へと戻ることになって最後の宇宙船が火星から出発した。しかしその最後の宇宙船は火星軍の検問にあった。それは火星の主要都市の一つがまるごと消滅してしまったからだ!!犯人は三人。破壊工作員は最後の宇宙船にいると思われていたが『都市を破壊したか?』の質問に嘘発見器の反応は乗員全員に『真実です』回答。
でも本当は都市は破壊されておらず、丸ごと小さなガラスのブンチンに閉じ込められていたのだ!!だから犯人は『破壊したか?』の質問に『してない』で『真実』なのだ!
しかし、その話を三人の犯人は三人が三人偶然居合わせた人に洗いざらい吐いてしまう。…が、しかしここにオチあり。その偶然居合わせた人は実は…(後は推してしかるべし)

記憶売ります We Can Remember It for Wholesale
この話は『トータル・リコール』という映画タイトルでシュワルツネッガーが主演してました。
火星に行きたくて行きたくて行きたくてたまらない平凡な男(ダグラス・クウェール)がいた。でも安月給のサラリーマンのあんまりにも平凡すぎのこの男には火星になんかとてもじゃないがいけそうにない。そこでその男は火星に行ったことがある秘密捜査官という記憶を買いにいくことにした。これなら安価でしかも実感もある。
しかし記憶を植え付ける課程でこの男にはどうしても火星に行ったという記憶を植え付ける余裕がない。しかも火星に行ったという記憶よりも『実は火星に行ったことがあって忘れていた』ことを思い起こさせたのだ!!
この男…ダグラス・クウェールは平凡な男なんかでなく、実は火星に行って秘密捜査官をしていた筋金入りの殺し屋だったのだ!!
なるほどこれはかなり映画向きな話です。映画の方はまだ見たことないのですけどきっとすごいアクションだらけなんでしょうね。小説の中でさえも平凡でダメな男というイメージから恐ろしくツワモノの殺し屋というイメージになってしまってますから。あと結末もきっちりしてるんでしょうね。でも小説は短編なので消えそうもなさそうな記憶と次から次へと思い起こす記憶とでフェイドアウトしてます。あとは想像する人のみぞ知る…でしょうか?

Author&WebMaster : Azusa | 2003年4月 3日 | フィリップ.K.ディック


アンドロイドは電気羊の夢をみるか?

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

出版社:早川書房
著者:フィリップ・K・ディック

DO ANDROIDS DREAMOF ELECTRIC SHEEP?
フィリップ.K.ディック 著 浅倉 久志 訳 『私はロボット』のような人間を護り、人間の役に立とうとしている話とは正反対で、シビアなお話です。 タイトルから判るように、ロボットではなくアンドロイドなので、違うのは当然なわけですが。 そもそもアンドロイドとロボットの違いはイマイチ曖昧ですけどね。 未来のイヴあたりを見ると、基本的にアンドロイドは人造人間と訳されてるあたりで、人が使役するための道具という感じはしなくもないですが。 (未來のイヴではどちらかというと愛玩用ですけどね) 核で荒廃した世界で火星に移住した人間達が使用していたアンドロイド達が火星から逃げ出してそれを追う賞金稼ぎというなんともハードボイルドな話です。 映画『ブレードランナー』の原著らしいですけど、映画そのものは(個人的には)ラストとゲイシャガールとうどん以外は幻想的ではあるけどテンション低すぎて最後まで見るのは辛かったのですけどね。 正直な所、暗くて地味な話です。 この世界のアンドロイドは限りなく人間に近いし(ナマモノらしい…)殺しても死体を検査しないとわからないらしい…(殺すという言葉を使ってしまったあたり、生物っぽいです。) 読んでいる途中でなんでアンドロイドを殺さないといけないのかな? とか思ってしまうけど…アンドロイドは何かしら心が冷めている感じなのでやっぱり殺す? って感じでしたね。 しかし…この世界に出てくる宗教団体のようなものの存在意義が今ひとつわからなかったのは私に読解力がないせいなのでしょうかね?

Author&WebMaster : Azusa | 2002年7月 7日 | フィリップ.K.ディック


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