The Room of Reverie
Book Report



スニーカー文庫で読んだ本

トリニティーブラッド 嘆きの星


トリニティ・ブラッド
Reborn on the Mars
嘆きの星

出版社:スニーカー文庫
著者:吉田直

故・吉田直先生による長編小説。 既に何巻も出ていて、話もいよいよ佳境に、という所で、先生がお亡くなりになって未完に終わってしまった。惜しい。

文明・科学技術が衰退し、時代が逆戻りした西洋バロック風の世界で、人の血を糧にする吸血鬼(ヴァンパイア)もしくは長生種(メトセラ)と呼ばれる異種人類と、従来の人類・短生種(テラン)とヴァチカンとの間で繰り広げられる戦いを描いた作品......「今のところ」は。

出ているレーベルが、昨今のライトノベルを代表するスニーカーだったけど、その中で様々な作品が何人もの可愛い女の子を登場させている事が多い中、そういう要素をまったく出さない珍しい作品だった。
その代わり、表紙と中の挿絵を書かれているTHORES柴本氏の緻密で豪奢な絵のおかげか、バロック調の話の為か、とってもタンビな感じがする。実際、女性ファンが圧倒的多数を占めている気もするし、コミカライズはあすかコミックスだし、かくいう私もタンビは好きなのでこの作品はかなり好きだ(笑
というより、既にコミックスは全巻揃えた上でこの本も随分前に読んでいたのだけど、話を読むのに夢中で、逆に、まともに見ていなかった。

で、しっかり読んだのだけど、この話、よくよく読むと、かなり黒い。
他の巻も既に読んでいるけど、特にこの一巻が目立って黒い。
裏切りも酷いし、聖職者同士の扱いも酷い。捕まった聖職者達が男性は手足を切って犬に食わすとか、女性の司教が拘束された挙げ句、三十人に輪姦だとか、それを助けられそうなのに助けない潜入作戦中の聖職者達だとか。生首を皿に盛って晩餐の席に出したり、他色々と。
以降の巻ではそこまではないのだけど、なぜかこの巻に限っては酷く陰惨な雰囲気だ。作者・吉田直先生がスニーカーの作家陣の中ではかなり筆力のある方なだけに、深刻な話がより深刻だったのが痛々しかった。
いや、それでも私は好きなのですけどね。

公式サイト
http://www.kadokawa.co.jp/toribla/

Author&WebMaster : Azusa | 2008年5月12日 | トラックバック(0) | コメント(0) | スニーカー文庫


きみにしか聞こえない CALLING YOU


きみにしか聞こえない―CALLING YOU

出版社:角川書店
著者:乙一

"Callinng You" "傷-KIZ/KIDS-" "華歌"の三作が収められた乙一氏の短編集。
どれも、文学小説だとか純愛小説という分類に入れた方が良いのではないかという感じの作品ばかりで、最近、アニメ化を視野に入れたような内容のライトノベル小説を数多く出しているスニーカー文庫の中でかなりの異彩を放つ作品集になっている感じがする。
(読み終わってから気付いたのだけど)その中の一つ、"Callinng You"はきみにしか聞こえないというタイトルで映画化されている様子。
ページはそんなに多くなかったし、出ているレーベルの割に軽すぎも無く、(内容は少し重いが)だからといって辛くもなく読みやすかったし、内容も当たりだったと思う。

表題にもなっている"Callinng You"は電話をかけてくるような友達が居なくて携帯電話を持たないヒロインが想像の中で作り出した自分の心の中だけの携帯電話へ突然、見知らぬ少年から電話が掛かってくるという内容だが、これが切ないというか、まぁ簡単に言ってしまえば出会い→離別となっている作品だったりする。
物語のおおまかな流れそのものは切ない話や泣ける話の王道の筋道なのだけど、想像の中だけの携帯電話に電話がかかってきてそれが出会いのきっかけ、というあたりが読んでいて思いもよらない発想だったので、このあたりでかなりの新鮮さと驚き、好奇心を持って読めてしまう。王道のお話はちょっと外すと「ベタで狙いすました話」でそれが嫌味っぽく感じるのに、おおまかには王道の切ない話の筋道なのにこの話では「ありきたりの切ない話」と冷めた目では見切れなかった。かなしい話を読んでもそう簡単に動じなくなっていた私でも、切ない気分になったあたりで結構アテられてしまったなと。
久々に(良い意味で)やられちゃったなぁという感じで。

二作目の"傷-KIZ/KIDS-"は特別学級に通う事になった主人公とそこで出会った人の傷を自分に移し替える事の出来る少年との友情物語なのだけど、生傷が痛々しいのと、途中まで仲良くしていた顔中にやけどの痕を残しているアイスクリーム屋のお姉さんが「三日間だけでいいからやけどの痕を引き受けてくれる?」と言ってそのまま主人公の友人の少年にやけどの痕を移してそのまま失踪してしまうあたりが痛々しい。やけどの痕を残したお姉さんはせっかく手に入れた傷跡が無い生活が捨てられずに堪えられなくなって逃げたのだろうということは物語の雰囲気で十分判るのだけれど、やっぱり小さくて可愛い男の子に自分のやけどの痕が移せるとはいえそのまま押しつけて逃げるというのを見てるのは痛々しい。
主人公はちょっと悪振った子だけど、傷の移せる少年は純粋無垢という感じなので余計に痛い。
他、余計な事を言う親戚の大人や、主人公達の失踪した母だとか父親を殺したりした母親なども痛々しい。
最終的には少年たち(特に主人公)は裏切る周りの大人達を許そうみたいになるが、うーんやっぱり大人の身勝手さを見るのは子供が可哀想と素直に思った。
しかし、そんな悲惨な状況でも強くたくましく生きようとする少年の姿はすがすがしくてかっこいいですね。感化されて読んでいる側まで強くなったような気になりますわ。

最後の"華歌"は歌う少女の顔をした花を見つけた話だけど、最初、主人公が男かと思った(笑)
挿絵の影響もあるけど、女性なのか男性なのかまったく区別の付かない口調と行動をしている一人称で話が進んでいるので思いっきりカンチガイした。多分、そういう風に意図的にやってるんじゃないかとは思うけど、すっかり騙された。
電車事故で恋人とその恋人との間の子が死んでしまって自分は病院に入院している失望した主人公という、一作目の"Callinng You"ほど盛り上がらないけれど主人公の失望度合いと状況の深刻さがこちらの方が上と思えた。ただ、主人公が良い大人だったというのもあって、しんみりと話が進んでしんみりと終わったので切なくて切なくて痛くて痛くて仕方がないというような事はなかった。
まぁ最後の〆がしんみりしていたおかげで、"Callinng You"でずっと痛い思いをせずに済んだかもしれない。

Author&WebMaster : Azusa | 2007年11月 9日 | スニーカー文庫


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